勇気と強さは恋をするために備わった力

2012.05.15 00:44|日々思うこと
勇気と強さ。

それは、をするために

神様が、わたしたちに下さった、力。




ネットでも、知人の紹介でも、

知り合うということだけならば、簡単だ。

その膨大な出会いの機会から、

縁の繋がりを見つけ出し、

縁を紡いでいくということは、

広い海原へと、飛びこむ勇気と、

泳いでみる勇気とが、必要だ。


ネットという媒体をきっかけに始まるというものは、

良縁だったとしても、

素直に公表しづらいものだ。


それでも、ネットと言う海原へ飛びこみ、

縁を見つけ、をしている人々は、

勇気があるのだと、思う。


知人の紹介、

結婚情報サービスでの紹介、

お見合い、

ネットでの出会い

どれも、これも、

人との知り合う切っ掛けとしては、同じチャンスなのだ。

始まりの形は違うかもしれないが、

その、次、

次の時間を、踏み出すことが、出来るかどうか、

それが、大切なんだと思う。

勇気というものは、

をする相手に、出逢うために、

備わった力なのだと、思う。

強さというものは、

が終わりを迎えた時、

死んでしまわぬように、

与えられた力なのだと、思う。



出会いを見つけるための、

人類史上最強のツールを携えた、

今を生きるわたし達は、

神様が下さった力を、

ちゃんと、使っているのだろうか。

なんとなく、

勿体ない、いや、間違った使い方を、している。

そんな気がした。


■前に書いたネットから始まる恋愛の話■
You've Got Mail~話が聴きたくて☆

わたし達の春は、

メールのやり取りで始まった。


You've Got Mail


まだAOLが日本でもサービスをしていた頃、

映画館で独りで観た映画。

ネット上で知り合った、名前も顔も知らない誰かと、

メールのやり取りをしながら、お互いが惹かれあっていく。

ロマンティックなコメディ。


十数年の時が流れ、

そんな恋愛も「アリなんだ」なんて、

躊躇う人も、居やしないだろう。

けれど、

速度の遅い回線で、ネットに繋いでいた頃、

そんな恋愛をする大人は、

まだ少なかったはずだ。


少々、不埒な掲示板で知り合った私たちは、

フリーメールの往復書簡を始めた。

毎日、毎日。

どんなに帰宅が遅くとも、

そのメールは届いた。

東京に居る日は、ネットカフェから、

自宅に帰った日には、決まってかなり遅い時間に。

取り留めのない、日常が綴られる。

わたしは、それに返事をする。

毎日、毎日。

わたしも、メールが待ち遠しくなり、

あの人も、誰かが「聴いてくれること」を喜んでいた。

メールを「聴く」とは、可笑しな表現だけれど、

確かに「聴いているように」わたしも、思えた。


「今日は早いけど、直帰です」

「独りで蕎麦屋で夕飯です」

「接待で、飲みすぎました」

「土曜は、独りで買い物にいってみた」

「君は、何してたのですか」


一日の終わりに、

誰かに話しかける様、

その日の出来事が綴られる。

聴いているのは、

わたし。


独りで過ごす、時間。

ひどく孤独で、ひどく淋しくて。

そんな姿が、聴こえ、見える。

あの人を、

淋しがらせている者は、誰?


そして、わたしもまた、

名前も顔も知らない、あの人に、

聴いてほしいと思った。

返事が欲しくて、言葉を返す。

誰も傍に居ない、淋しいわたし。



あの頃も、今も、

未だ理解できないことがある。


「連休は何しているの」

「わたしは、予定は未定タイプです」

「僕は、そうも言ってられなくて」

「日帰りの家族サービスでドライブです」

「温泉に寄ってきたよ」

「ずっと運転しっぱなしで」

「疲れた」


11時半。

ニュース番組を見始めた時間。

あの人は、ようやく独りになる。

やっと静かになったリビングで、

パソコンに向かう。

名前も顔も知らない誰かに、

話を聴いてほしくて。

名前も顔も知らない誰かの、

話が聴きたくて。


「今度、お茶でも、しませんか」

「OK」


お互いが、惹かれることは、

もう、決まっている。


あの頃も、今も、

未だ理解できていない、ことがある。


何に、不満なのか、

何が、そうさせているのか。


ただ言えるのは、

夫婦という関係は、

所詮は、他人だということ。

他人だけれど、

家族なのだ。

家族なのだけれど、

男と、女なのだ。

それを忘れてしまった時、

気持ちが、彷徨うものなのだ。

そして、彷徨った訳を聞かれたなら、

素直に謝ることしか、出来ない。

それが、夫婦というもの。

謝る側と。

許す側と。

原因はどこにあるのか。

許す側は、

自分に原因があるとは、

崖っぷちに立たされ、

初めて知ることになるものだ。



男と、女である前に、

今は、家族だから。

家族には、

内緒にしたい、

それが「原因」なのだから。


あの人と、

わたしと、

もう一人の女と、


You've Got Mail



に落ちるとか、がしたいとか、

セックスレスだとか、セックスがしたかっただとか、

理由はいくらでもあるけれど、

結局のところ、淋しい大人は、

「誰かに話を聴いてほしかった」

ただ、それだけ。

それだけ。

ただ、それだけのこと。


忘れた頃に、思い出す。

そんな季節。

今年も連休の季節が訪れる。

思い出したくもない、季節。




    にほんブログ村 ランキング参加中■
    にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
    にほんブログ村
    にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
    にほんブログ村

    人気ブログランキングへ
    このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。




    関連記事

    テーマ:ネット恋愛
    ジャンル:恋愛

    tag:恋愛 ネット 出会い You've Got Mail メール

    It's me or it's him~煙草がまだ格好よかった頃

    2012.05.07 14:01|日々思うこと
    裏切られたり、 裏切ったり、

    嘘をつかれたり、 嘘をついたり。

    だから、恋愛は、面白い。


    Over by the window, there's a pack of cigarettes.
    Not my brand you understand,
    Sometimes the girl forgets
    She forgets to hide them
    I know who left those smokes behind
    She'll say, oh, he's just a friend,
    And I'll say, oh, I'm not blind
    to..


    1979年。

    まだ、中学生だった頃。

    FMでよく流れていた曲を、

    数年前にやっとCDで手に入れた。

    今聴くとイントロの、ベースが刻む音が印象的だなと思った。

    それに、

    彼と彼女ともう一人の彼の

    関係が、なんとも、面白い。

    彼女が二股かけていることに、

    気がついた男の呟き。

    まだ、煙草が格好よかった頃の話だ。


    there's a pack of cigarettes.

    Not my brand you understand,

    「僕の煙草と、違うって、知っているよね?」



    その臭いも、煙も、

    あまり気持ちの良いものでは、無い。


    だから、煙草の好みと言うのは、

    吸わない者にとっては、まったく興味がないことだ。


    「彼女が、隠し忘れたんだ」

    男と言うのも、繊細で、

    「違う歯ブラシがあった」

    と同じくらいの衝撃的な事件なのだろう。


    1979年。

    「Him」という小さな物語に登場する、

    彼と彼女ともう一人の彼。



    その頃に、大人の入口に居た者にとって、

    煙草という存在は、

    手指にさりげなく、自然に、ある物で、

    本当に、何気ない、存在だった。




    嫌煙気味のわたしと居ることで、

    自然に吸わなくなった、あの人は、

    セブンスターを愛していた。

    「一本、いい?」

    それが、なんとなく、格好良く思えた。

    一本、燻らす姿を、眺めていると、

    その小さな時間だけ、

    煙草の煙に意識が集中されて、

    魂がホンの少しだけ、遠くに行っているように、見える。

    そんな少しの時間の、

    小さな逃避。

    それが、愛おしいのかなと、思えた。


    1979年


    彼女に二股をかけられ、振られた。

    「今は、笑い話や」

    そう言ったのは、不惑をちょっと過ぎたあの人。


    It's me or it's him


    裏切られたり、

    裏切ったり、

    嘘をつかれたり、

    嘘をついたり、


    だから、恋愛は、面白い。

    そうして人は、

    厚みを増していくのだと、思う。

    It's me or it's him





    Him - Rupert Holmes


    関連記事

    テーマ:エッセイ
    ジャンル:小説・文学

    tag:恋愛 煙草 him 彼女

    男と女がすることは・・・溺れる恋の始まりは その2

    2012.05.06 13:49|溺れる恋
    ☆「溺れる恋の始まりは」の続き☆


    男と女が、宿に泊まり、

    することは、決まっている。



    旅行雑誌を捲りながら、

    楽しげに、こう言った。


    温泉なら、絶対に」

    「部屋食で」

    「12時チェックアウトで」

    「布団敷きっぱなしや」

    「なにか、企んでる感じ」

    「そうや」

    「それに、スケベなおっさんって感じ」

    「でもな、君は、寝坊助やろ」

    「そうね、10時にバタバタチェックアウトは疲れる」

    「そやろ」


    霧雨でぼやけるビルを眺めながら、

    わたしは、まったく呆れたことを、考えていた。

    「どの色の、パンツにしようかな」

    それに、

    あの人は、

    「細くは無いけどな」

    「ほんま、小さくて、かわいらしい」

    なんて、言葉にしてくれるけれど。

    本当のところ、

    「やはり、三十路も半ばやな」

    なんて、言われたら、心外だ。


    カフェのテーブルの向こうでは、

    まるで二十歳の青年のような顔をした、

    あの人が、居た。





    汗ばんだ肌のまま、

    畳みの上に、ふたりで寝転んだ。

    芝生の上の、

    周りの目が気になる、シチュエーション。

    それとは、明らかに、熱い。

    「遠い昔に、知っていた、感じ」

    「そうか」

    確かに、そう思った。

    なんでだろう。

    遠い昔、近くで感じていた体温だと、思った。


    恋とは、

    きっと、そんなものなのだ。

    前世だとか、そんな、訳のわからない事では無く、

    心がひきつけられる、ということは、

    遠い昔に、出逢ったことが、きっとあるのだ。

    「ねえ、温泉、行こうよ」

    「そうや、ごろごろしてる場合やない」

    「本末転倒や」

    そう言うと、

    慣れた手つきで、浴衣姿になった。

    「ねえ、似合うよね」

    「そうか」


    そうなのだ。

    少々、丈が足りていないのだが、

    男の浴衣姿と言うものは、

    なんとも艶っぽいと思った。


    遅れを取ったが、

    後ろを向いて、着替えてみた。

    なんとなく、

    潔い脱ぎっぷりは、後にとっておこうと思ったから、

    後ろを向いたのだ。


    「色、白いなあ」

    「えっち」

    「本末転倒、、温泉温泉



    わたしは、浴衣というものが、

    てんで、着こなせない。

    腰紐をぐるっさせ、結ぶだけなのに。

    「なんか、丈が長いんだよね」

    「めんどっちい」


    「紐の位置が、悪いんや」

    「丈、余ったところ、おはしょり作らんと」

    ウエストで締めるから、ワンピースのように

    なってしまうらしい。

    「たぶんな、寸胴の反対なんや」

    「寸胴の反対って、誉め言葉だよね」

    「着付けする人が、困る体型やな」

    面倒だから、

    適当に、ギュッと結び、

    ふたりでエレベータへ向かう。

    季節外れの温泉宿

    それでも、適当に人は居るものだ。

    洗い場に、ポツリポツリと。


    「スッピンも、全然、変わらんな」

    「それも、なんだかなあって感じ」

    「ええやんか」

    「部屋、戻ろう」

    あの人は、タオルだけ左手にぶら下げて、

    上機嫌な表情だ。

    至極、上機嫌。



    多分、こんなふたり連れには、

    慣れ過ぎたであろう、仲居のおばちゃんは、

    手際良く、段取り良く、

    夕食を並べて行った。

    わたし達は、まるで、エネルギーを補給するが如く、

    パクパクと平らげた。

    そして、あの人は、

    上機嫌な表情だ。

    至極、上機嫌。



    男と女が、宿に泊まり、

    することは、決まっている。



    恋人でも、

    夫婦でも、

    もしかしたら、家族連れでも。


    この畳の上で、繰り広げられる、

    様々な、時間。


    布団が敷かれた、二人では広すぎる部屋。

    ごろっと寝転んだあの人は、

    肘枕をして、サッカーにスイッチを合わせた。

    あの人の隣で、ごろ寝をするのは、

    至極、気持ちがいいものだ。

    それに、肌蹴た浴衣から、

    男らしい、脛が見えるのも、気持ちがいい。


    「してもいい?」

    「いいよ」

    寝転んだまま、

    わたしは潔いから、さっさと脱いだ。

    「小さくて、かわいらしい」

    やはり、言ってくれた。

    肘枕のまま、横から眺める目は、

    上機嫌だ。

    「そうかな」

    「かっこええなあ」

    「いやらしく、見えへん」

    「オシャレな水着みたいやし」


    ゴールドサテンの谷間に飾りがついた、

    シンプルなTシャツブラと揃いのビキニ。

    ローライズのジーンズにも、

    なんとなく、似合うと思ったから。


    霧雨でぼやけるビルを眺めながら、

    「どの色の、パンツにしようかな」と、

    考えていた、結果がこれなのだ。

    Tシャツでも響かなくて、とか、

    透けないモノとか、

    一応、勝負下着だよね、とか、


    「やっぱ、かっこええ」

    「ええ、匂いもする」

    「いつも、いい匂いや」


    きっと、今頃はジャスミンと、フレッシュなオレンジが

    混ざり合った頃。

    もうしばらくしたら、

    サンダルウッドが、漂うだろう。

    肘枕のまま、横から眺めているあの人は、

    まだ、抱きしめては、

    くれない。

    肘枕のまま、潤んだ目をして、眺めている。

    胸元の飾りを、人差し指で弄りながら、

    「かっこええ」

    また、そう呟いた。

    そうして、わたし達の夜は、始まった。




      にほんブログ村 ランキング参加中■
      にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
      にほんブログ村
      にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
      にほんブログ村
      にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
      にほんブログ村

      人気ブログランキングへ
      このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。
      関連記事

      テーマ:秘密の恋愛
      ジャンル:恋愛

      tag:温泉 宿 下着 旅行 男と女

      辛い恋は、忘れるべきものだろうか 2

      2012.05.06 00:34|お気に入り
      連休も後半。

      頭で考える、まとまった時間が取れず、

      前回の続きが、中途半端に止まっている。


      「日本ブログ村」の中に「トーナメント」というコーナーがあって、

      なんとなく参加している。

      トーナメントということだから、順位が決まるのですが、

      正直、あまり気にしていなかった。

      しかし、先週「あれ、ブログ読んでくれる人が増えてる」と思ったら、

      「準優勝」になったページがあった。

      確かに、読み返してみると、

      我ながら出来栄えが良いのだった。



      さて、今回は、個人的にお気に入りのページをご紹介いたします。

      連休後半のお暇つぶしにでも、してくださると幸いです。



      ☆一度だけ、ちょっとした冒険をした時のお話を綴った連作☆
      ■不機嫌な週末■

      ☆「不機嫌な週末」の続き☆

      ■見送られる気持ち■

      ☆ここ数日の東京の天気と、このお話がダブってしまい、ちょっとセンチメンタルな気持ち。
      こんな「」の思い出☆

      ■雨と傘の思い出■









        にほんブログ村 ランキング参加中■
        にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
        にほんブログ村
        にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
        にほんブログ村
        にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
        にほんブログ村



        関連記事

        テーマ:遠距離恋愛
        ジャンル:恋愛

        tag:連休 トーナメント

        溺れる恋の始まりは

        2012.05.03 22:25|溺れる恋
        大人の恋、それは急ぎ足。

        大人の恋、それは、ためらいの連続。



        国道135号線。

        相模湾を右手に眺めながら、

        車を走らせる。

        「ここで」

        「飯、食っていこう」

        わたしも、夫も、遅い結婚をした。

        おとな二人の暮らしというのは、

        静かで、穏やかで、活気は無いものだ。

        時折、こうして、のんびりと海沿いを車で走る。


        独りで過ごした時間は、

        二人で居るより、ずっと、ずっと、多い。

        だから、

        言葉少ない夫も、

        おしゃべりなわたしも、

        きっと、同じくらいの、

        秘め事は、持っていると、思う。

        6年か、7年か。

        少しの、否、ずっと、違う。

        適当な言葉が出てこないけれど、

        昔と言うほど、前では無い。

        この古ぼけた温泉街に、

        わたしは来たことが、ある。


        「ここ、来たことがある」

        「左の坂、上がると確か、駅」

        「俺も、社員旅行で来たよ」

        「20年前は、賑わってたけどな」

        「そうだよね、社員旅行って言えば、ここだよね」


        坂を上り、駅前に出て、

        土産物屋が連なる道を、下る。

        適当な店を、見つけることが、出来なかった。

        「もう一周してみよう」

        そう言って、車は坂を上った。


        坂の途中、左に、海が見えた。

        ほんの一瞬。

        長く、細い、階段が続き、

        その先に、海が見えた。

        あの人と、手を繋ぎ、

        下った、階段


        その、大きな掌の、

        さらっとした質感と、少し高めの体温が、

        右手に、記憶されている。


        思い出した。



        この坂の上。

        日本中が熱く沸いた、6月。

        地響きのように聞こえる、歓声。

        あの、蒸した初夏を、

        わたしは、覚えていた。


        わたしも、あの人も、

        早く、知りたかった、6月。

        迷いが吹っ切れた、6月。



        わたしと夫は、適当な店を見つけることが、出来なかった。

        既に、頭の中に、鮮明な地図が浮かんでいた。


        「信号の所に、ファミレスあるから」

        「お腹、空いたでしょ」

        「帰りは、原宿あたりで、きっと渋滞するし」

        「それも、そうだな」

        「ここまできて、ファミレスか」


        不意のハプニングも、

        東の言葉は、深刻そうに、伝わるものだ。


        ファミレスでも、ええやろか」

        西のイントネーションで言われると、

        わたしは、穏やかになれたものだ。

        「たまには、いいね」

        「そやろ」

        「ほな、いこか」

        「オッケー、あたし、ドリアにしよっと」


        頭の中に、過去と現在が、入り乱れ、

        もう一人のわたしが、甦る時。


        「まあ、ええか」

        「まあ、ええか」

        そう小さく呟いた。

        呪文のように。


        目の前にある、育ち盛りの子供が食べるメニューが、

        胃袋に収まるまでは、素知らぬ振りをすることにした。


        「まあ、ええわ」


        道路と、海岸が見えるあの席は、

        そのままだった。

        なにも、変わらぬまま、今も存在する。

        違うのは、

        湿った6月の風では無く、

        今は、乾いた風であることか。

        頭の中で、

        過去と現在が、入り乱れ、整理することが、

        必要だった。




        梅雨寒の東風は、体を冷やす。

        だから、

        頬を寄せ、抱き合った。


        港の公園で。

        運河の木陰。

        みなとみらいの芝生。

        そして、駅のカフェで。


        あの人の、少し痩せた頬が好きだった。

        適当に乾燥し、指を滑らすと、

        さらっとした質感がする。

        そして、あの人の、匂いを感じる。


        耳たぶを、噛んでみると、

        ひんやりと、凍えていた。



        「耳を食われたのは、初めてや」

        「やわらかくて、美味しいから」

        「もっと、噛んでいい?」

        「ああ」


        あの人は、我慢の限界をとうに過ぎていた。

        振り返りながら、

        それでも

        前に進む。

        自分を肯定するために。

        肯定し、同意し、それに至る理由を探さなければ、

        あの人のような男に、

        不貞をすることは、出来ない。


        それでも、

        急ぎ足で、けれど、ためらいながら。

        前に進む。


        「ねえ、温泉行こうよ」


        そう、切り出して、あげた。


        「ほんま」

        「ほんまに」

        「ええんやろか」

        「うん、楽しみ」

        「ほな、宿探さんと」


        言ってあげて、

        よかったと、思った。

        切っ掛けが、必要だった、筈だ。


        この古ぼけた温泉街を、

        あの人が、なぜ選んだのかは、知らない。


        「初めて東京に赴任した時」

        「一度、宴会で行ったんや」


        通勤電車を、逆に下れば、

        1時間で着くことは、嬉しかった。

        いつもの小さなトートバッグに、

        Tシャツと下着、それに、化粧ポーチだけ突っ込んだ。

        男とのお忍びに、

        大きな荷物は、至極、格好が悪い。

        それに、

        男と女が、宿に泊まり、

        することは、決まっている。

        浴衣を羽織れば、それでよい。


        午後3時。

        畳に座ると、気まずい空気が流れ、

        けれども、

        高揚した気持ちは、隠し様がない。

        人の目を、気にしなくても良いということを、

        わたし達は、初めて経験したのだから。


        「まだ、明るいな」

        「十分に、明るいね」

        「海、いこか」


        下り坂の脇に、

        長く、細い、階段が続き、

        その先に、海が見えた。

        手を繋ぎ、

        階段を下った。


        さらっとした質感と、少し高めの体温。

        あの人の、掌は、いつもそうだ。

        きっと、

        耳たぶ以外の、全身が、熱いのだと思った。


        海岸は、想像したのと、違っていた。

        「なんか、キレイになっちゃってる」

        「ほんまや」

        「整備されたんやろうな」

        本当は、

        今すぐに、不埒なことをしたい欲求を

        抑えていることは、

        お互い分かっているはずで、

        けれども、とりあえず、

        夜は、長い。

        それに、

        電車の時間も、関係が無いのだから。


        大人の恋、それは急ぎ足。

        大人の恋、それは、ためらいの連続。


        「なあ、部屋戻ろうか」

        「寒いんでしょ」

        「ああ、そろそろ、温まりたい」

        「それに、サッカー見ないといかん」

        「ふふ」

        「何が、可笑しいんや」

        「なんだか、可笑しい」

        「仕方ないやろ」

        「そうだよね」

        「夜は、長い」

        「そうね、夜は、長いよね」

        そうして、

        わたし達は、あの階段を上って行った。


        ☆☆☆続 く☆☆☆




          にほんブログ村 ランキング参加中■
          にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
          にほんブログ村
          にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
          にほんブログ村
          にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
          にほんブログ村

          人気ブログランキングへ
          このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。






          関連記事

          テーマ:秘密の恋愛
          ジャンル:恋愛

          tag:大人の恋 温泉 熱海 階段 ファミレス

          トラックバックテーマ 第1422回「ゴールデンウィークのご予定は?」

          2012.04.30 14:42|日々思うこと
          ここ数日、騒々しく小さな大物の騒ぐ声が聞こえる。
          「ああ、そういえば連休なのね」
          少子化とはいっても、東京の東側は、子育て世帯が多い地域。
          家賃の安さと、物価の安さが、そうさせているのかもしれない。

          ふと気付いた。
          12時前になると、あんなに騒々しかった声が「ピタっ」と、
          しなくなる。
          世の中、昼ごはんというのは「12時」からなのだ。
          それに、遠くに見える公団住宅の洗濯物も、
          朝の7時にはずら~っと干されている。

          規則正しく、朝・昼・晩。


          世の中を見渡してみると、
          アラフォー&アラフィフ夫婦のみの生活というのは、
          割と適当というか、時間やライフスタイルに融通がきく。
          なんだか自分本位に進んでいるように見える。


          正直、自分本位な生活を捨てることは、出来ずにいる大人。


          世の中の消費行動は「家族連れ」を中心に動いているものであり、
          わたしには、どうも、かなり、しっくりとこない。
          しかも、魅力も感じなくなっている。
          「自分が年を取ったから?」
          そういう訳ではなく、
          欲しいモノがある場所もあることは、あるのだが、
          そういった所には、最近の傾向として「家族連れ」向けの趣向が凝らされており、
          休日に行こうものなら、騒々しさを我慢する必要があるのだ。

          昨今、元気で活き活きとしているのは、
          「お年寄りと、ベビーカーを押したママ、であろう」
          それだけ、バリアフリーが進んだ証拠だと思う。

          あと十年後には、団塊ジュニアと言われる世代が、
          50歳を迎える。
          その頃には、成熟した大人向けの「街」が増えることを
          期待している。

          わざわざ混雑した連休に遠出したり、買い物に行ったり、
          そんなことは、どうやら、出来ないし、したくもない。
          連休は、「毎年、暇でね~」
          と、言えることは、幸せなのかもしれない。

          今年の連休もまた、自分本位な生活だ。



          こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当ほうじょうです。今日のテーマは「ゴールデンウィークのご予定は?」です。5月1日、2日は平日といえども、明日からは3連休1日2日も休んでどーんと大型連休を楽しむという方もいるのでは?この大型連休、あなたは一体なにをする予定ですか?私は海外へ旅行に…と言いたいところですが近場にドライブして、観光をしてくる予定です道は混んでるかな~?混んでるだろうなと思い...
          トラックバックテーマ 第1422回「ゴールデンウィークのご予定は?」








            にほんブログ村 ランキング参加中■
            にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
            にほんブログ村
            にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
            にほんブログ村
            にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
            にほんブログ村

            人気ブログランキングへ
            このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。

            関連記事

            テーマ:思ったこと・感じたこと
            ジャンル:日記

            黄色の電車に乗って

            2012.04.28 00:52|溺れる恋
            サクラの花は、もう散ってしまった。

            わたしは、混雑する黄色い電車に乗る。

            隅田川を渡ると、

            新しいシンボルがそびえ立つ。

            それは、既に、日常の風景に溶け込んで。


            東京の西から東へ走る電車は、

            緑色の電車が描く、丸い円の真ん中を、

            黄色と、橙色とが、平行して走る。

            わたしは、水色の路線で育ったから、

            お茶の水だとか、秋葉原だとか、

            あの辺りでは、上手く乗り換えが出来ない。


            あの人は、年度末に西へと荷物をまとめた。

            空港へ向かうバスで、

            右手で顔を覆い、うつむくと、

            疲労困憊といった姿を見せた。


            「月曜、東京やから」

            「毎日、電話するから」

            「な」

            「それに、毎週、来るから」

            「いくつか、いい所、見つけてるしな」

            疲労困憊で、

            画策に明け暮れて、

            3月は過ぎた。


            「疑われた」

            夫の行動に、

            疑いを持たぬ方が、疑問だ。

            それほど、

            わたし達の2月と3月は、

            一緒に居たのだから。


            「それで、どうしたの」

            「するわけ、ないやろと」

            「答えた」


            男のため息は、

            こうやって、吐くものなのだ。

            男の嘘は、

            こうやって。



            ふたりで過ごす週末に、

            あの人は、実直さを隠せない。

            実直であるがゆえ、

            疑いを持たれることも無く、時間は過ぎて、

            実直であるがゆえ、

            疑いを持たれた時には、それは事実なのだ。

            「笑えるやろ」

            「必ず、泊まる場所、言わなあかん」

            「そうね、笑えるね」

            「子供じゃないんだし」

            「ああ」


            サクラの花は、もう散ってしまった。

            わたしは、混雑する黄色い電車に乗る。

            まだ、新しいシンボルの話すら、無い頃。

            隅田川を渡り、駅で待ち合わせをした。

            時間通りに、重たいカバンを掛けた、あの人が現れた。


            「ねえ、この駅、似てるよね」

            「そうやな、君の所と似ている」


            都会の古い駅は、一様に灰色をしている。

            「国電」その名前の方が、なんだか似合う。

            ガード下に店が並び、

            ゴチャゴチャとしているものなのだ。

            放置自転車で埋まる歩道を過ぎ、

            その辺りでは、一番立派なホテルに着いた。


            「いいやろ」

            「お得感ありや」

            「電話、しなくていいの」

            「今日は、いいんや」

            「そうなんだ」


            あるじが戻ったスウィートホーム。


            「荷物は、もう片付いたの」

            「オレの荷物なんて」

            「置く場所もないんや」

            「思い切り、迷惑そうな、顔された」

            「そりゃ、そうだよね」

            「ほんまや」


            こうして、今まで通りの時間を過ごす。

            違っているのは、

            夢の世界から、現実へ戻ったということ。

            夢の世界に片足を入れたまま、

            立ちすくんでいた、

            あの人とは、違っていた。

            もう、東京の人では、無い。


            ホテルの部屋は、隅田川とは反対側だった。

            けれど、そんなことは、

            関係が無いことだった。

            朝まで、もうそんなに時間は、残されてはいない。

            駅のホームで、互いを見送る、その瞬間に、

            わたしは、消える。

            あの人の、頭の中から、

            消えてなくなる、存在なのだ。



            憎たらしい。


            無性に、腹が立った。

            「なんか、憎たらしい」


            そう言って、肩に噛みついた。

            「痛っ」

            「ああ、歯型ついた」

            「まあ、ええわ」

            まだ、そんなことに、

            嫌な気分になるほど、

            気持ちは、遠ざかっては、居なかったし、

            意味深な傷跡を、見せるような、

            関係は、どうやら未だないらしい。

            「もっと、噛んでやる」

            「気が済むまで、したらええ」

            「おしりにも」

            「太ももにも」

            「ああ、したらええ」


            わたしのあの人が、

            ようやく、戻ってきた。

            甘い移り香を、あの人は纏う。



            ゴチャゴチャした灰色のガード下を、

            手を繋ぎ、駅へ向かう。

            混雑する黄色い電車に乗って、

            周りの目は、気にも留めず、

            二駅の間、寄り添った。


            お茶の水で、乗換えや」

            「特快がちょうど来るんや」

            「わたしも、そうしようかな」

            「違う、秋葉原で、乗換えや」

            「そうだったかなあ」

            「そうや」



            わたしは、扉から押し出され、

            人の波に、流されそうになる。

            それでも、閉まる扉の奥を目で追った。

            小さく手を振る、あの人が居た。

            黄色い電車は、

            行ってしまった。


            わたしは、水色の電車に乗る。

            わたし達が時間を重ねた、街へ向かう。


            あの人は、

            橙色の電車に、乗り換えた頃だろうか。


            「7時45分か」

            「マックにでも、寄ろうかな」


            わたしは、混雑する水色の電車に揺られ、

            多摩川を渡る。

            そして、

            ため息を、吐いた。




              にほんブログ村 ランキング参加中■
              にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
              にほんブログ村
              にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
              にほんブログ村
              にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
              にほんブログ村

              人気ブログランキングへ
              このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。


              関連記事

              テーマ:遠距離恋愛
              ジャンル:恋愛

              tag:秋葉原 お茶の水 隅田川 電車

              You've Got Mail~話が聴きたくて

              2012.04.20 14:07|溺れる恋
              わたし達の春は、

              メールのやり取りで始まった。


              You've Got Mail


              まだAOLが日本でもサービスをしていた頃、

              映画館で独りで観た映画。

              ネット上で知り合った、名前も顔も知らない誰かと、

              メールのやり取りをしながら、お互いが惹かれあっていく。

              ロマンティックなコメディ。


              十数年の時が流れ、

              そんな愛も「アリなんだ」なんて、

              躊躇う人も、居やしないだろう。

              けれど、

              速度の遅い回線で、ネットに繋いでいた頃、

              そんな愛をする大人は、

              まだ少なかったはずだ。


              少々、不埒な掲示板で知り合った私たちは、

              フリーメールの往復書簡を始めた。

              毎日、毎日。

              どんなに帰宅が遅くとも、

              そのメールは届いた。

              東京に居る日は、ネットカフェから、

              自宅に帰った日には、決まってかなり遅い時間に。

              取り留めのない、日常が綴られる。

              わたしは、それに返事をする。

              毎日、毎日。

              わたしも、メールが待ち遠しくなり、

              あの人も、誰かが「聴いてくれること」を喜んでいた。

              メールを「聴く」とは、可笑しな表現だけれど、

              確かに「聴いているように」わたしも、思えた。


              「今日は早いけど、直帰です」

              「独りで蕎麦屋で夕飯です」

              「接待で、飲みすぎました」

              「土曜は、独りで買い物にいってみた」

              「君は、何してたのですか」


              一日の終わりに、

              誰かに話しかける様、

              その日の出来事が綴られる。

              聴いているのは、

              わたし。


              独りで過ごす、時間。

              ひどく孤独で、ひどく淋しくて。

              そんな姿が、聴こえ、見える。

              あの人を、

              淋しがらせている者は、誰?


              そして、わたしもまた、

              名前も顔も知らない、あの人に、

              聴いてほしいと思った。

              返事が欲しくて、言葉を返す。

              誰も傍に居ない、淋しいわたし。



              あの頃も、今も、

              未だ理解できないことがある。


              「連休は何しているの」

              「わたしは、予定は未定タイプです」

              「僕は、そうも言ってられなくて」

              「日帰りの家族サービスでドライブです」

              「温泉に寄ってきたよ」

              「ずっと運転しっぱなしで」

              「疲れた」


              11時半。

              ニュース番組を見始めた時間。

              あの人は、ようやく独りになる。

              やっと静かになったリビングで、

              パソコンに向かう。

              名前も顔も知らない誰かに、

              話を聴いてほしくて。

              名前も顔も知らない誰かの、

              話が聴きたくて。


              「今度、お茶でも、しませんか」

              「OK」


              お互いが、惹かれることは、

              もう、決まっている。


              あの頃も、今も、

              未だ理解できていない、ことがある。


              何に、不満なのか、

              何が、そうさせているのか。


              ただ言えるのは、

              夫婦という関係は、

              所詮は、他人だということ。

              他人だけれど、

              家族なのだ。

              家族なのだけれど、

              男と、女なのだ。

              それを忘れてしまった時、

              気持ちが、彷徨うものなのだ。

              そして、彷徨った訳を聞かれたなら、

              素直に謝ることしか、出来ない。

              それが、夫婦というもの。

              謝る側と。

              許す側と。

              原因はどこにあるのか。

              許す側は、

              自分に原因があるとは、

              崖っぷちに立たされ、

              初めて知ることになるものだ。



              男と、女である前に、

              今は、家族だから。

              家族には、

              内緒にしたい、

              それが「原因」なのだから。


              あの人と、

              わたしと、

              もう一人の女と、


              You've Got Mail



              に落ちるとか、がしたいとか、

              セックスレスだとか、セックスがしたかっただとか、

              理由はいくらでもあるけれど、

              結局のところ、淋しい大人は、

              「誰かに話を聴いてほしかった」

              ただ、それだけ。

              それだけ。

              ただ、それだけのこと。


              忘れた頃に、思い出す。

              そんな季節。

              今年も連休の季節が訪れる。

              思い出したくもない、季節。

              ■関連記事■
              ☆気遣いの得策☆
              ☆5月の夜とビールの思い出☆




                にほんブログ村 ランキング参加中■
                にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
                にほんブログ村
                にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
                にほんブログ村
                にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
                にほんブログ村

                人気ブログランキングへ
                このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。


                関連記事

                テーマ:ネット恋愛
                ジャンル:恋愛

                tag:You've Got Mail メール 淋しい 家族

                柔軟剤の香りと対極にあるもの

                2012.04.19 00:40|日々思うこと
                ここ数年、

                ライトな香りや石鹸の香りでは無く、

                「柔軟剤の香り」を漂わせる女が増えた。

                幼稚園の送迎バスを待つお母さんの群れ。

                スーパーのレジを待つ人々。

                昼間の電車。

                そんな場所は、柔軟剤の香りで満たされている。

                ずいぶん前。

                スポーツクラブのロッカーで、

                「あら、いい匂い」と言われたことがあった。

                汗まみれだから、いい匂いがするはずは無い。

                どうやら脱いだTシャツから香ったようだ。

                ダウニーのマウンテンスプリング。

                緑のキャップの。

                もう10年以上前、

                ソニープラザか、ドンキホーテで買っていた柔軟剤。

                結婚してからは、

                さすがにピンクのキャップのは止めた。

                いいおっさんである夫から、

                エイプリルフレッシュの香りがしたら、思わず吹き出してしまうではないか。

                緑のキャップなら「まだマシかな」という香りだった。

                けれど、このダウニーという代物は、

                元来、アメリカのガレージかキッチンに置いてある、

                ドラム式の巨大な洗濯機用に出来ていて、

                我が家の45リットル洗濯機では、

                ホンの少量を投入すれば、充分な効果と「香り」があるのだ。

                それに、

                わたしは、クリーニング屋の糊の香りと、

                ホテルのリネン室から運ばれて、ルームメイドが交換してくれる、

                分厚いタオルの香りが好きなのだ。

                柔軟剤の香りは、

                「なんだか、安っぽい」と思うのだ。

                それでも、

                洗濯をしたのなら、つい使うのが柔軟剤で、

                どうせ使うなら、好みの香り選ぶ。

                しかも、最近の商品は、なんとなく、欲しくなる機能性があるものだ。

                しかし、

                「あの人、レノアハピネスの香りがする」

                とか、

                「あの人、ゲインアプルマンゴタンゴの香り」

                なんて、間違っても言われたくは、無い。

                最近は、外国製も含め、国産も、

                香りが残り過ぎるのが、困る。

                かといって、

                無香というのは、原料臭が強い気もする。




                フリージア、オーキッド、ローズ、

                マグノリア、ジャスミン、ネロリ、

                サンダルウッド、カシミアウッド、ピンクペッパー、

                トンカビーンズ、アンバー、ホワイトムスク



                自然の木々や花々の香り。

                動物の命の尊さを鑑みて、人が合成させた香り。

                それらを絶妙なバランスで組み合わす。

                それが、香りと言うものだ。

                洋の東西を問わず、

                何千年もの間、人々を魅了したのは、

                纏う人の、体温で、

                その人の、香りとなる物だからだ。


                すれ違いざまに、香るのは、

                「ジャスミンの香り」とか、

                「ホワイトフローラルの香り」とか、

                「パウダリーな香り」とか、

                「スパイシーな香り」だとか、

                そんな表現が出来ないと、どうにもこうにも、

                艶やかさが、足りないと、思う。


                女も男も魅了する。

                記憶される。

                そんな香りは、

                決して、画一的では無い。

                体温で、その人の肌に馴染む。

                纏う人の、雰囲気に溶け込む。


                わたしは、

                ウッディフローラルや、

                フローラルフレッシュ。

                やはり、

                そんな香りがする、女で在りたい。

                ただ、

                わたしの周りの男達は、

                概して、香りを使う習慣は、無いのだけれど。

                首筋や、頬の、甘い香り。

                顔を近づける。

                どんな男も、

                セクシュアルな、匂いがするものだ。


                柔軟剤の香り。

                セクシュアルな匂いの

                対極にあるような、気がした。

                <関連記事>
                ☆甘く危険な香りは媚薬☆
                ☆「家庭のニオイ」と「壊したい欲求」☆
                ☆遭難信号☆
                ☆独り暮らしと残り香☆



                ちなみに・・・柔軟剤に関連して、
                ある県で面白い調査をしていた。

                県民の暮らしを取り巻く、あらゆる事柄や物を
                調査し、その情報を掲載しているのだ。

                柔軟剤のにおいの強さの比較調査
                隣家で使用している外国製柔軟剤の強い臭いで体調を崩したとの相談が寄せられた。化学物質との因果関係や発生の仕組みについては、未解明の部分が多い状況であるが、化学物質過敏症等の発症に関係する可能性も懸念される。
                においの感じ方や、そのにおい物質に対する反応には個人差がかなりある。そこで、国産及び外国産の柔軟剤のにおいの強さを比較調査し、消費者に情報提供を行う。



                調査の結果は、外国産がにおいが強い訳ではないそうだ。





                  にほんブログ村 ランキング参加中■
                  にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
                  にほんブログ村
                  にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
                  にほんブログ村
                  にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
                  にほんブログ村

                  人気ブログランキングへ
                  このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。


                  ダウニー エイプリルフレッシュ / ダウニー(Downy) / 柔軟剤 液体柔軟剤★税込1980円以上で送料...
                  ゲイン ジョイフルエクスプレッション アップルマンゴタンゴ / ゲイン(Gain) / 柔軟剤●セール...


                  関連記事

                  テーマ:思ったこと・感じたこと
                  ジャンル:日記

                  tag:柔軟剤 ダウニー フローラル 香水

                  雨と傘の思い出

                  2012.04.18 13:56|溺れる恋
                  頭の奥で、の予感がする。

                  今日も、西の空が暗くなったと同じ頃、

                  ズキズキと痛くなる。



                  あの頃のわたし達と、

                  は、相性が良かった。

                  憂鬱な天気なのに、

                  なんとも居心地のよい時間だけが、在ったから。

                  水のカーテンは、

                  薄布が揺れるように、

                  小さな空間を作る。



                  わたしは折たたみの小さなを使う。

                  余程の降りでなかったなら、

                  都会の生活に、畳んで仕舞えるが適当で、

                  不意の外出には、日に使ったりも出来るのだ。


                  桜木町に、まだ東横線の改札があった頃。

                  外に出ると、

                  が降り出した。

                  あの人は、わたしの真似をして、

                  1,000円の折たたみを買った。


                  「初めて使って見たんやけど」

                  「便利やな」

                  そういって、二人で寄り添い歩いた。


                  出会った頃。

                  通勤客で溢れる駅前の、

                  コーヒーショップで小さなデートをした。

                  持っていたのは、紺色のきちんとしたで、

                  「これでないとダメなんや」と言った。

                  ネクタイとダークスーツと、

                  3つ揃うと、どことなく上昇志向を感じた。

                  その時と、

                  なにも違っていない。

                  けれど、

                  少なからず、わたしに影響され、

                  変化をしている部分を時折見せる。

                  張り詰めた生き方を、男はするものだ。

                  弛んだ時、初めて素の顔が見えるものだ。


                  がわたしに掛からぬよう、

                  肩を濡らして歩くあの人が、

                  素の顔を、見せることが、嬉しく思えた。


                  新しいは、きれいに水を弾く。

                  そして、こういうものは、

                  取りあえず、畳む必要がある。

                  あの人の、仕舞う作業に、

                  思わず笑ってしまう。

                  丁寧に、丁寧に、

                  を折り畳むのだ。

                  そんな作業に不釣り合いな、大きな手をして。

                  左だか、右だか、

                  同じ方向に、きれいに元のとおり折り目をつける。

                  は、しっかりと巻き上がる。


                  「なんや、シワシワやな」

                  「こうしてな」

                  「こうするやろ」


                  が降るたび、

                  小さな作業に、わたしは、ため息を吐く。

                  気の毒な畳み方を繰り返され、

                  元の折り目も、早々に消え去ったは、

                  無理やり巻かれて、バッグに押し込まれた。


                  二度目のの季節を迎えた時、

                  弛んだ素の顔を見せることは、もう無かった。

                  けれど、重たいビジネスバッグの中には、

                  あの紺色のが入っていた。

                  そして、

                  「これは、やっぱり便利やな」

                  そう言うと、

                  丁寧に、丁寧に、

                  を折り畳む。

                  「それ、使っているんだ」

                  「ああ、便利で手放せなくなった」

                  「引越しの時に、捨てたんだと思ってた」

                  「残したものも、多いんや」

                  「写真は、どうしたの」

                  「・・・。」

                  に視線を戻すと、

                  「オフィスの引き出しにある」と言った。

                  左だか、右だか、

                  同じ方向に、きれいに元のとおり折り目をつける。

                  その作業を、見ている視線は、

                  確かに、何度も眺めた素の顔だった。

                  張り詰めた生き方に、戻ったけれど、

                  しっかりと巻き上げ、満足げに仕舞う姿に、

                  わたしとの、時間を見た気がした。

                  変化した記憶は、

                  こんなにも、些細な事に、残されていると。

                  翌朝も、しとしととは降っていた。

                  駅までの道を、

                  がわたしに掛からぬよう、

                  肩を濡らして歩くあの人は、

                  張り詰めた顔に、戻る。

                  そうして、西の街に戻るのだ。


                  頭の奥で、の予感がすると、

                  そんな思い出も、やってくる。

                  の思い出と一緒に。




                    にほんブログ村 ランキング参加中■
                    にほんブログ村 恋愛ブログ 忘れられない恋愛へ
                    にほんブログ村
                    にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ
                    にほんブログ村
                    にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
                    にほんブログ村

                    人気ブログランキングへ
                    このブログは事実に基づくフィクションであり、実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません。
                    関連記事

                    テーマ:遠距離恋愛
                    ジャンル:恋愛

                    tag: 折りたたみ 桜木町 東横線

                    04 ← 2012/05 → 06
                    -
                    - - 1 2 3 4 5
                    6 7 8 9 10 11 12
                    13 14 15 16 17 18 19
                    20 21 22 23 24 25 26
                    27 28 29 30 31 - -
                    リンクリストに追加

                    最新コメント

                    今日のメッセージ

                    月の開運法

                    月の開運法ブログパーツはJavaScriptを有効にする必要があります。

                    カウンター

                    検索フォーム

                    メールフォーム

                    名前:
                    メール:
                    件名:
                    本文:

                    RSSリンクの表示

                    小鳥たちが飛び回る(Twitter連携可能)ブログパーツ

                    Author: キャシュリーヌ
                    “ プロフィール ”

                    キャシュリーヌ

                    Author:キャシュリーヌ
                    恋の価値観は千差万別であるなら、その恋の「正否」はさまざまな答えがあるはず。
                    だから「それも」「あれも」「どれも」恋には違いないのです。
                    ☆御挨拶のページも御覧ください☆

                    恋に悩む人に向けた「私小説的」なブログです。
                    アメブロで書いていた内容に訂正加筆をしての投稿となります。
                    どうぞご感想をお寄せ下さい。
                    また恋愛のアドバイスも出来る範囲でお答えします。

                    尚、このブログは事実に基づくフィクションであり、
                    実在の人物・地名・団体・事件などにはいっさい関係ありません

                    “ 最新記事 ”

                    “ ブログ村参加してます ”

                    “ ポチッが励みになります ”

                    “ 全記事表示リンク ”

                    全ての記事を表示する

                    “ カテゴリ ”

                    “ 月別アーカイブ ”

                    “ リンク ”

                    “ 恋は招くもの ”

                    “ 二人の時間を過ごすなら ”

                    “ 恋に似合う香り ”

                    “ ブロとも申請フォーム ”

                    この人とブロともになる