忘れられないという不幸
毎年。
年末からこの時期はひどく不幸な気分になる。
わたしはひどく落ち込む。
わたしの心は・・・。
「居心地のよいあの冬に取り残されたまま」だから。
2002年12月。
横浜の夜空は深く深く、青い色が広がる。
港の濁った色とは裏腹に。
空は朝も、昼も、夜も、美しい。
寒さに震えていても、わたし達は、
二人で居れば温かかった。
あれから何人か男が変わり、
3年後に落ち着いた。
けれども、「忘れられる」わけではなく、
夜毎、懐かしく気だるい思い出が現れては消えていく。
明け方の4時頃。
時折、あの人の夢を見る。
見たくても見れるはずも無く、
気にもしていない時に、不意に現れる夢。
今朝のは、夢見が悪い。
久しぶりに、嫌われた。
悪友が言う。
「あんたが不幸?」
「不幸なのはあの男だと思うよ」
「あんたは、体験を糧としてちゃんと起き上がり立っている」
「図太さを持っているんだよ」
「それに有言実行」
そうだ、あの人に逃げられた頃。
あの人が守った人々に陳腐なライバル心を抱いていた。
わたしの婚活は、
ライバル心から来たものだったから、
何十人も出会った男達には、誠に申し訳のないことをした。
なんて本当にバカげた理由を掲げた「婚活」だろう。
結果的にあの人と、同じ財閥系列企業の、
あの人とは違う理系男子。
あの人より、少々多めの給与をもらい。
あの人とは違う平均的な体格の男性を選んだ。
なんて陳腐でバカバカしいのだろう。
女と言う生き物は。
あの人が夢の中でわたしに質問した。
「しあわせやろか」
「結婚して」
わたしは、こう答えた。
「まあまあね」
「まあまあか」
「そんなもんやな」
そう言って、あの人は駅の階段を下りて行った。
結婚と恋愛は別だ。
最近になって、「本当に別物なんだな」と実感している。
「忘れられない不幸」を背負って、
わたしは「まあまあ、しあわせ」な暮らしをする。
あの人は、「忘れたいという不幸」を背負って、
時折、思い出されて苦悩する。
どちらが不幸で、どちらが、しあわせを手に入れたのだろう。
わたしは不幸とは、もう言わなくて、よいのかもしれない。
では、あの人は?
「まあまあやな」
と言ってほしいと思う。
小さな思い出は持ち続けて欲しい。
「居心地のよいあの冬に取り残されたまま」
そんな夢を見て欲しいと思う。
根雪が残る、2012年1月。
東京から西の空を眺め、
忘れられない冬があることを、
不幸に思うわたしが居る。
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