見送られる気持ち
立ち位置を変えると、分かることがある。
不機嫌な週末の、
22番線ホーム。
音も無く、東に向けて滑って行く列車。
あの人が、ほんの少しの時間だけ、
その場に居てくれたことを願った。
後ろを一度だけ振り向いて、
その後は、
振り返らずに、
ほら、
あの人は、ホームタウンの顔になる。
階段を早足で降り、地下鉄の改札を走り抜ける。
電車が地上に出れば、
完全に消し去らねばならない。
シチュエーションコメディは、架空の、ドラマだ。
わたしは都合がよい想像力しか使わない。
だから、そこから先のあの人が、
どんな姿になるのかは、考えないことにした。
無理やり。
なぜって?
完全に消し去りたいのは、あの人のホームタウンの顔だから。
「見送る気分は」
「さびしいんやな」
「見送らる方が」
「ええな」
それぞれの置かれる立場。
あの人は、ホームでもアウェーでも、
見送られ、迎えいれてくれる、場所がある。
不機嫌な週末。
わたしは、見送るのも、見送られるのも、嫌いだ。
帰りに列車を選んだことは、失敗だった。
所要時間の合計は一緒でも、
見送られ、2時間半。
2時間半も独りで居るのは、辛すぎた。
それに、地上を音も無く走る列車は、
そのまま一本の線で繋がっている。
けれど、空に上がれば、違う。
一度、線は、途絶えるのだから。
あの人が、上手に切り替えが出来たのは、
常々、空路を選んでいたからだ。
閃いてしまった。
搭乗ゲートで、
後ろを一度だけ振り向いて、
その後は、
振り返らずに、
そうして、地上から離れる。
リセット。
一度、リセットできる。
ほら、
あの人は、ホームタウンの顔になる。
到着フロアを通り抜けたなら、
ほら、
わたしの好きな顔になる。
名古屋を通過すると、メールが届く。
「ごめんな」
「弁当は食ったか」
リセットした表情を、少し曇らせたかったから、
返信は、しばらく時間を置くことにした。
「飛行機にすれば、よかった」
一度、打った言葉を、
やはり消してみる。
「食べ終わったところ」
「やっぱり、時間かかるね、列車は」
すぐに返信が着た。
「所要時間はおんなじや」
東京まで、1時間もある。
すれ違う列車。
耳が痛くなる。
「帰ったら、文句言っておこう」
そう、車窓に映る自分に向かい、
呟いた。
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