選ばれる女、選ばれない女
どんなことが、あっても。
浮気をされた妻の悲劇とは、
多分、「浮気をされた」事では無く、
「浮気したことを素直に告白される瞬間」だと思う。
そこで、別れる夫婦なら、
その程度の縁の深さなのだと思う。
裏切られた気持ちに蓋をして、
どうして元の生活を続けられるのだろう。
独り身のわたしは、疑問に思った。
けれど、人は「罪を素直に認められてしまう」と、
許せるものだ。
許した後は、ひどく冷酷になれるものだ。
「選らばれた女」の権利だから。
浮気をした男と女に冷酷になることは。
わたしは「選ばれなかった女」
たった一度の浮気なら、きっと、あなたを選ぶはず。
どんなことが、あっても。
面と向かって、言ってあげたかったけれど、
そうもいかない。
あの人は、頭を下げ、素直に告白した。
男は、優柔不断な生き物だ。
決断するまで長く、永く、苦悩する。
決断を、決めたらな、
揺るがない。
揺るがない決意とは、そう簡単に決めることはできない。
「全部、話をした」
もう、揺るがないな、と思った。
もう長いこと、あの人は苦悩していたから。
あの人が、選び、守った女。
裏切られた女は、強いものだ。
選ばれた女というプライドが、
堤防の役割をしてくれる。
許せる女というのは、わたしにとって、
まるで、女神。
悲劇の女神。
選ばれたという自負と引き換えに、
奪われた過去を忘れることが出来ないと、思う。
「たった一度の浮気なら、きっと、あなたを選ぶはず」
選ばれなかった、わたしには、
自負も無いし、プライドも無い。
けれど、残してもらったものがある。
真剣に恋愛したという時間。
プライドを踏みにじられる告白も無く、
「別れ」を告げられた、だけなのだから。
あの人の、残してくれた最後の「愛情」
去って行く男。
心に開いた隙間は、新しい時間が埋まる隙間。
最後に「愛情」を残してくれたなら、
埋める作業は、苦にはならない。
事実は消せないけれど、
知らない部分をさらけ出す時間は、
あの人達の、愛情を図る良い機会と、なったかもしれない。
そう思えば、
わたしは決して、悪い訳でもない。
あなたにとっては、悲劇かもしれない。
けれど、わたしにとっては、笑える喜劇。
あの人にとっては、どうなのだろう。
あの人は、
独りでは無い。
苦悩して下した決断は、
正しかったと、わたしは思いたい。
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